先生とシンデレラ
「え。」

"おいでよ"?

…どこに?

…いや、解る。

"椅子に座れ"って言われてる事は解る。

そこまで馬鹿じゃない。

でも。

可笑しいのはその椅子がある位置なわけで。


…その椅子の位置、先生の目の前なんだけど。

きっとそこに座ったら。

先生の長い脚と私の脚が触れあう。

本当の意味での"目の前"になってしまう。

きっと。

先生の顔も眼と鼻の先な訳で。

私が中々動き出さないのに起こったのか、先生は不機嫌そうな声で、
「…おいで。」
ともぅ一度言った。

だって。

いくらなんでも近すぎだろう。

私が行くべきか、そうでないべきか悩んでいると。

先生はただ一言、
「来ないの」
と自分の目の前にある椅子を人差し指で、コンコンッと叩いた。

「…だって…!」

私がそう言うと。

先生は私をじっと見ながら。

「…先生に会いに来たんでしょ。」

そう言った。
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