葵先輩は冷たい。



いつものように河原で寝そべりながら、あたしはただただ空を見つめていた。


今日は雲の流れが早い、とか。
積乱雲だな、とか。

そんなくだらないことばかり考えて。孤独を紛らわせるように、1人きりのあの家に帰る時間を遅らせていた。




ーー今日は乱層雲が空を覆っている。


きっとあと1時間もしない内に雨が降り出すだろう。


だけど、あたしに帰ろうという考えなんて微塵もなくて。ただ、傘を持ってくるの忘れたな… と冷静にそう思うだけ。



自分でも分かっているけれど、あたしは他人から見たら相当な変人に違いない。

だから、愛されないのも自分のせいだって痛感している。



「はあ……」

大きく溜め息を吐く。

無性に泣きたくなるのは何でだろう。


分からない。
分からないけど…

これは嬉し涙ではない。
そして、悲し涙でもない。
悔し涙でも、きっとない。

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