葵先輩は冷たい。
「俺は永瀬葵。東中3年。」
ご丁寧なことに、わざわざ学生証まで取り出してあたしに見せた。
ーーやっぱり。
別に分かっていた。
噂通りの人だから。
まあ強いて言うのであれば、あたしが想像していた以上に顔が整っていたことだろう。
驚きはしない。
ただ、差を見せつけられるだけ。
「あたしは冴島莉子。西中2年。」
「へえ、年下なんだ。」
「はい。」
ほのかに香るマリンの匂い。
それはあまりに彼らしくて。
ほんとに嫌味なくらい爽やかだ。
だいたい…
どうしてあたしなんかに構うの?
嘲笑うため?
馬鹿にしているの?
そんなわけないのに。
あたしの心は邪悪の塊だから、そんな嫌な考えしか出来ない。
なんて、愚かなんだろう……