蒼穹の誘惑
「私もやっと自分の時間が作れそうだわ。デートのご招待と期待していいのかしら?」

「勿論です。先週の約束はまだ有効ですか?僕なんかで良ければですが……」

「あら、浅野君こそこんなオバサン相手でいいの?」

「何言ってるんですか!?僕はみずきさんがいいんです!」

浅野の声がワントーン高くなる。顔を見なくても想像できる、頬を赤く染めているに違いない。

「嬉しいこと言ってくれるのね。明後日なら6時から空いているんだけど、浅野君は?」

「僕も空いてます。今度はフレンチではなくおいしいイタリアン予約しておきますね?」

「ふふ、楽しみだわ」

「じゃぁ、場所は後でメールします」

「待ってるわ」

通話が終了し、みずきは気だるそうにため息をついた。

「イタリアンかぁ……最悪」

そんな失礼な一言を漏らすが、今は浅野を上手く捕まえておかなければならない。

いつものみずきなら、こんなデートは大歓迎だ。それが仕事の一環となると断然興味が沸く。

だが、今回ばかりは、気乗りしない。一オクターブ高い声で嬉しそうに答えてはいたものの、虚しさが空回りしているようだった。



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