蒼穹の誘惑
重い気分でスマホの電源をオフにし、エルメスのバーキンの中に無造作にほおり投げたとき、高宮が社長室に戻ってきた。

「遅くなりました」

軽く頭を下げる高宮の様子はいつもと変わらない。昨日声をあげて笑っていた姿はやはり幻だったのだろうか。

だが、今のみずきはそんなことを考えている余裕などない。

「で、副社長はあなたに何の用だったの?」

顔はにっこりと笑っているが、口調はかなり好戦的に高宮を問い詰めた。

「まぁ、ご想像の通りです。浅野氏のアプリソフトの開発提携について反対されています。株主総会前に勝手に決断するなと」

「何を今更……これだから昭和初期生まれの堅物はイヤなのよ!あなたは私を説得しろとでも言われたの?」

「ええ、そんなところです」

「何て答えたの?」

みずきの尋問のような質問は続く。高宮は動揺するもことなく、まるで準備していたようにスラスラと答える。




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