蒼穹の誘惑
まるで高宮に特別な理由があって欲しいと望んでいるようだ。

ただ、あの夜の高宮は、あの時だけはいつもと違っていた。

性急で、激しく、狂おしいくらいのセックス-----

離れがたく、一分の隙もないくらい互いに深く繋がっていた。

あの夜を思い出すだけで、みずきの身体の芯は熱くなり、心が騒ぎ出す。

PCメールの受信音に、みずきは、はっと我に返る。どうやらまた思い返していたようだ。


(仕事中は考えないようにしていたのに……)


自分も世間一般の女と変わらないということか----

普段冷たい男に優しくされれば、必要以上に心がときめいてしまうバカ女と大して変りがない。

自分に無関心だった高宮に、少し激しくセックスを求められただけで、気になって性がないとは……


(バカな女ね、その当人は、平気で他の男と寝ることを進めるというのに……)


みずきはざわつく心を落ち着かせるように酸化してしまった苦いコーヒーを嚥下した。




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