蒼穹の誘惑
その怒りは、愚かで浅はかな自分に?

それとも、悪魔のように冷笑を浮かべる目の前の男に?

「何故こんなことをっ……やめて……」

動揺と怒りに声を上げると、高宮はあっさりとみずきから身体を離した。

自分からやめてと言ったくせに何事もなかったように距離をとられれば、心がチクリと痛んだ。

「あなたが言ったのですよ?」

ふと零された不可解な言葉にみずきは眉根を寄せる。

「取引を成功させたい、と。少々荒療治になりましたが、成功した。そうでしょう?」

「そういう、こと-----?」

どうしてこんな男に少しでも魅かれたのだろうか。

余りの愚かさから自己嫌悪に泣きたくなる。

「薬など必要なかったわ」

「そうですか。でも楽しめたでしょう?」

そう冷ややかに言い放つ高宮の頬をみずきは再度思いっきり引っ叩いた。

もう言うべき言葉すら見つからない。

狭い車内には、重苦しい沈黙だけが残り、それ以上二人が言葉を交わすことはなかった。



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