蒼穹の誘惑
(1)
六月に入り、雨の日が多くなり、外に出れば、むっとした蒸し暑さに不快感が増す。
道を行き交うサラリーマンは、ハンカチを片手に今にも降り出しそうなどんよりとした雲を見上げ、足早に歩みを進める。
そんな光景とは対称的に、みずきは行きつけのカフェマシェリで、ゆったりとした読書の時間を楽しんでいた。
窓際のソファに身を預け、彼女お気に入りの愛読書の中から、ジェフリー・アーチャーの『遥かなる未踏峰』を読みふける。
去年の暮れに発売された、アーチャーの最新刊だが、ここ一年ゆっくり読書を楽しむ暇もなかった。
主人公マロリーの名言『そこに山があるから登るのだ』その言葉を反芻し、彼のように衝動的に、本能の赴くままに人生を楽しめれたら、と思う。
結局自分の人生は『長谷川』という狭き世界の中で足掻いていたいだけだった。
パラパラ降り出す雨の音を聞きながら、不思議と心が落ち着き、やっぱり自分はこんな風に悠悠自適に過ごす方が性に合っている、そんな風に思えるようになった。
六月に入り、雨の日が多くなり、外に出れば、むっとした蒸し暑さに不快感が増す。
道を行き交うサラリーマンは、ハンカチを片手に今にも降り出しそうなどんよりとした雲を見上げ、足早に歩みを進める。
そんな光景とは対称的に、みずきは行きつけのカフェマシェリで、ゆったりとした読書の時間を楽しんでいた。
窓際のソファに身を預け、彼女お気に入りの愛読書の中から、ジェフリー・アーチャーの『遥かなる未踏峰』を読みふける。
去年の暮れに発売された、アーチャーの最新刊だが、ここ一年ゆっくり読書を楽しむ暇もなかった。
主人公マロリーの名言『そこに山があるから登るのだ』その言葉を反芻し、彼のように衝動的に、本能の赴くままに人生を楽しめれたら、と思う。
結局自分の人生は『長谷川』という狭き世界の中で足掻いていたいだけだった。
パラパラ降り出す雨の音を聞きながら、不思議と心が落ち着き、やっぱり自分はこんな風に悠悠自適に過ごす方が性に合っている、そんな風に思えるようになった。