蒼穹の誘惑
「いいえ。彼の持ち株は9%あります」

下座でパソコンを操作していた高宮が、突如口を開いた。

「-----どういうこと?」

みずきは高宮へと視線を移すが彼はパソコン画面を見つめたまま続ける。

「正確に言うと、浅野氏の持株は現在4%です。そして、残り5%が彼の父上インターステイトカンパニーの篠田氏が保持しています。譲渡はいつでも行える状態です」

みずきははっとして栄次郎を見た。

叔母が持つ2%を浅野に譲渡した-----

自分がその2%を手にして、第六条を行使するより、遥かに巧妙な手だ。

姪を自らの手で追いやったと言われずに済む。

あの2%をどうにかするべきだった-----

これは完全に自分の落ち度だ。

みずきは力が抜けたように、用意された椅子に初めて腰をかけた。

「この9%で浅野氏は取締役会に出席し、投票権、もしくはどんな重要方針も三ヶ月保留する権限を持つ。彼はわが社にとって脅威としかいえない。要求は呑んでいただけますか?」

獲物を仕留める猛禽類のように、西条はみずきを追い込む。



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