蒼穹の誘惑
「あれは使用するなと言っただろう!?みずきへのブラッフだったはずだ!」

「保険は大事だ、と言ったのはあなたですよ?」

「あの2%は‘私の’保険だ!まさか本当に浅野に譲渡したとは……幸子が了承したのかっ!?」

「さぁ、私は何とも……双方の話し合いでまとまったとしか……」

「しらばっくれるなっ!」

「奥様は何とおっしゃられているのですか?」

「い、今友人と旅行中だ……先週から家を空けている」

「そうですか」

幸子の所在を尋ねられ、栄次郎の覇気が弱まる。

このこを妻に問い詰めたいところだが、行き先もわからず、携帯も繋がらなくて困っているのは自分だ。

だが、彼もここで怯むわけにはいかない。

「貴様が裏で手を引いていたことなど百も承知だ!高宮、裏切る気か……っ!?」

胸倉を掴まんばかりの栄次郎の手を軽くあしらい、高宮は社長デスクに腰をかけた。

「裏切るも何も、奥様を、会社を先に裏切ったのはあなたですよ、副社長?」

「どう、いう意味だ?」

憎々しげに睨みあげていた瞳が動揺に揺れる。

何と追い詰めがいのない獲物だろうか、と高宮はクツリと笑った。



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