蒼穹の誘惑
明日の午前の便で、みずきはニューヨークへ経つ。

日本最後の晩餐が一人とは、いささか寂しい気もするが、みずきは誰とも会う気などなかった。

みずきが長谷川の代表取締役から退いたことは、まだ公にはなっていないが、業界では周知の事実となっている。

過去に関係した男たちから、次々と電話やメールが入ってくるため、煩わしくなり、二週間前に携帯を解約した。新しい番号を知っているのは、叔母の幸子と長谷川の一握りの人間だけだ。

意外にも、みずきには友人が多い。

心を開いていたかどうかは別として、気さくな彼女の性格は男女問わず人を惹きつけた。

友人たちとはメールやFacebookですぐに連絡が取れる。ニューヨークへ着いてから連絡するつもりでいた。

昔と変わって、地球の裏側にいても、距離が感じられなくなった。コミュニケーションのボーダレス化と言えば聞こえはいいが、それと同時に人間関係も希薄になったものだ、と思う。

自分はその希薄なコミュニケーションツールを多いに利用し、誰に告げることもなく日本から去ろうとしている。



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