蒼穹の誘惑
胸ポケットからスマホを手に取り、着信相手を確認した高宮の横顔が一瞬曇る。

非通知-----

一瞬出ることを躊躇うが、録音機能をオンにし、通話ボタンをスライドさせる。

「はい、高宮です」

嫌な予感がする。

「こんな時間にかけてくるとなると緊急なご用件ですか?」

声を落とし、相手の動向を探るように尋ねる。

電話の相手は一呼吸おくと、籠った声で低く告げる。

『富士河口湖町富士ヶ嶺○番』

機械を通して声を変えているのだろう、聞きとりにくいその声は、避暑地で有名なある住所を告げた。

急に背筋に嫌な汗が流れる。

何かが脳裏に警戒音を鳴らす。

そして次の瞬間、高宮は、嫌な予感程当たるということを実感する。



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