蒼穹の誘惑
地面にたたきつけられたときの泥が、足や服についている。色や匂いからして、公園の砂ではないことは確かだ。

空気も澄んでいたし、森林の中特有の匂いがした。車の音どころか周囲の音が全く聞こえなかったということは、かなりメイン道路から逸れているに違いない。

もう6月半ばだというのに、室内でも肌寒く感じることから、標高が高いということがわかる。

手足はしっかりロープで縛られている。関節を抜いたとしても腕を抜くのは難しそうだ。勿論ドアには鍵がかかっているだろうから、自力で脱出するのは無理だ。

ましてや、自分がどれくらい眠っていたかもわからない上に、窓ひとつないこの部屋では、今が昼なのか夜なのかも見当がつかない。

相手の出方を待つしかない。

目的はいったい何なのか――――

ストーカー犯罪ではないことも、性的目的な誘拐でないことも、直感で分かる。

みずき自信が目的なら、犯人は自分を監視下から外さず、傍に置くはずだ。

目的は、おそらく、『長谷川』だろう。

みずきが、割れそうなほど痛む頭を酷使し思案していると、ドアがガチャリと開き、男が一人入ってきた。



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