蒼穹の誘惑
(2)

長谷川本社を出た高宮は、すぐに指定された住所には向かわず、送られてきたメールの送信元を調べる為、その伝手の知人を訪ねていた。

座り心地の良い広々としたソファーに腰をかけるが、そこから見渡せる摩天楼の夜景を楽しむ余裕も、出されたバーボンを嗜む時間もない。

知人が書斎でメールの送信元を調べている間に、高宮はできる限りの情報収集をした。

まず、みずきが滞在していたリッツ・カールトンに電話をかけ、ここ数日の彼女の行動を調べた。

リッツに滞在中の三日間は、彼女は特別外の人間とコンタクトを取った様子もなく、一人で過ごしていたという。

ただ、昨夜だけは、みずきを訪ねて浅野がリッツのクラブフロアを訪れていた。クラブ会員ではなかったが、父篠田の名前を使い、クラブフロアに入っていたことがわかった。

会席「ひのきざか」で夕食を共にしたらしいが、その後みずきは部屋には戻った形跡がなく、翌朝チェックアウトが何者かによって済まされていた。

みずきと浅野の姿が夜の9時頃にロビーで目撃されている。

コンシェルジェによると、険悪な雰囲気はなく、二人は少し酔った様子で仲睦まじく寄り添っていたという。

二人の様子を脳裏に想像し、こんな状況だというのに、どす黒い感情がじわじわとこみ上げてくる。

憤る感情を抑え、高宮は素早く頭の中を整理する。



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