蒼穹の誘惑
縄が解かれ、ホッとしたのもつかの間、腕を動かすと、肩に激痛が走った。

「無理に動かさない方がいい。長時間縛られていたんだ。筋肉が固まっている」

「……っ……」

悔しさに仁科を睨むと、また目を細めてみずきを見据えた。

「ホント度胸の据わったお嬢さんだな。精神的にもかなり衰弱しているだろうに」

「ええ、フランスベッド以外で寝たことも、セックス以外で縛られたこともない繊細な私には、耐えられない状況だわ。さっさと要件を言って」

「あんたマジで面白いな?」

仁科はクックッと喉で笑い、みずきの傍に片膝をついて据わった。

「もっと弱っていると思ったがな……」

「十分よ。密閉された部屋で手足を拘束させ、情報を一切遮断して五感を麻痺させる。十分身体的にも精神的にも衰弱させられたわ。で、私は何をしたら良いの?」

「目を閏わせて、『助けてっ!』というのを期待していたんだがなぁ……」

みずきは、じゃあ、と向き直り顎をくいっと上げ、「助けて、ここから出してちょうだい」と居丈高な態度で言い放つ。



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