蒼穹の誘惑
「一応、命だけは無事のようですね」

高宮は、皮肉った笑いを浮かべ侮蔑した視線をよこす。握りしめた拳にぐっと力を入れ、高宮は怒りを収めた。

「要件を呑むんだな?」

「保障はできませんが、努力します」

「強がりはよくないぜ、お坊ちゃん?もたもたしていると、血の気の多い俺の部下が彼女に手を出してしまうかもな。あんないい女そうそういないからなぁ」

男は、高宮の反応を伺うように下世話な脅しをしかけてくる。恐らく、業と低俗なふりをして挑発しているのだろう。

分かっていても胸クソは悪い。

「で、私はどうしたらよいのですか?証拠データは消しました、形ある証拠はこれだけです、と戻ってきても信用できないでしょう?」

時間の無駄だと言わんばかりに、高宮はビジネスライクに切り替える。

「可愛げのない男だな。お嬢さんに同情するよ。俺の部下を一人監視としてつける。そいつの前で全てのデータ証拠を消去するんだ。データのバックアップが取られていたら、履歴でわかるらしいからな。下手なことはするなよ」

「わかりました」

「4時間後には戻って来られるな?その間、一切誰とも連絡を取るな」

男はそう言うと、小屋を出るように促した。



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