蒼穹の誘惑
外に出ると、ドアのすぐ横に、スーツを身に着けた男が一人立っていた。

眼鏡をかけ、一見インテリ風のサラリーンマンを思い起こさせるが、その動きの隙のなさから、この男もそれなりの訓練を受けたプロなのだ、と悟る。

「誘拐犯が、上質なスーツにポールスミスのネクタイですか?世も末だな……」

高宮は、目を細めてその男に視線を移すが、相手は高宮の嫌味に反応することなく無言で立っている。

「4時間以内に戻ってこい」

背後から急に低い声が降ってくる。

相変わらず気配のない男だ。

「了解しました。行きましょう」

眼鏡の男は、そう低く零すと、踵を返し、高宮の辿ってきた道を迷うことなく進んだ。

チラっと山小屋の傍に立つ男に視線を送れば、相変わらず嫌味な笑いを浮かべ片手を上げていた。

その眼は、無駄な抵抗はするなよ、と暗示を送っているようだ。


(胸クソわるいっ……)


苛立ちを表情に出さないよう努め、高宮は、振り返ることなく前を進む男の後を追った。



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