蒼穹の誘惑
雨が降った後のぐちゃぐちゃな山道をひたすら進んだ。足元は予想以上にひどく、歩きずらい。

身体中は痛いし、少しでも気を抜けば、その場に倒れこんでしまいそうになる。

浅野に支えられ、どこに向かっているかもわからず、ただ無言で歩みを進めた。

「少し休みましょうか?」

息を切らしながらもたれかかるみずきを浅野が心配そうに見つめる。

「だ、大丈夫よ。早く離れなきゃ」

「みずきさん、かなり辛そうです。道から少し外れますが、向こうの木の下で休みましょう」

「でも……」

みずきは、辺りを逡巡しながら眉根を寄せる。

休めるものなら休みたい。もう足が鉛のように重く、感覚もない。

だが、追いつかれたら―――

「まさか、道を外れて逃げているとは思っていないはずです。真っ暗だし、この山の中を探すのは困難でしょう。逆にここまで来たら、下手に動かない方がいいのかもしれません。明るくなるまで国道には出たいところですが、少しだけ休みましょう」

浅野は、躊躇うみずきの肩を押し、幹の根の上に座らせた。

腰を下ろした瞬間、疲れが一気に押し寄せてきた。

もしかしたら、休まなかった方がよかったのかもしれない。一度腰を下ろすと、もう立つ力が沸いてこない。

「目を閉じて休んでいてください」

みずきを気遣うように浅野が優しく声をかけてくる。髪を優しく撫でられ、みずきは吸い込まれるように目を閉じた。




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