蒼穹の誘惑
外に出ると、辺りは真っ暗で、10メート先は何も見えない。

この暗闇の中逃げなければいけないのかと思うとぞっとする。

「この小道を歩いていけば国道に出るはずです。ただ、右、左のどっちに行ったらいいのか……」

この期に及んで、浅野がいきなり尻込みする。

確かにアウトドアとは程遠そうだ。

「浅野君、どっちでもいいから、とにかくここから離れましょう?」

「そうですね。この道を使うわけにはいきません。鉢合わせになるかもしれない。足場は悪いと思いますが、小道に沿うように、林の中を進みましょう」

「え―――そう、ね」

みずきは、自分の足元に目線を落とす。このヒールで山の中を歩くのかと思うとぞっとするが、今はそれしか選択肢がなさそうだ。

「みずきさん、あなたのワンピースは色が明るいから目立つので、僕のシャツの下に隠れるようにしてくれますか?」

「わかったわ」

みずきは、浅野が肩にかけてくれたシャツに袖を通すと、ボタンをしっかり留めた。

「浅野君は、Tシャツ一枚で寒くないの?」

「大丈夫です。こんな時くらいちょっとは良い恰好させてください」

浅野はみずきの手を引きながら、悪戯っぽく笑った。

その笑顔に、どっと癒される。

彼がいてくれて良かった。敵か味方かはわからないけど、信用はまだできないけど、今は浅野に頼るしかない。




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