蒼穹の誘惑
みずきは、かなりのリアリストである。

能率主義の冷酷な父親に育てられたせいもあるが、別居し、愛人の元を転々としていた両親の姿を幼少の頃から目の当たりにし、恋愛や結婚に夢も希望も持っていない。

みずきに群がる男たちも自分の容姿と「長谷川」というブランドに惹きつけられているだけだと理解している。

そんな彼女は、自分の家庭環境にも、今置かれている現実にも不満を持たず、長谷川の家に生を受けた以上は仕方がないと受け入れている。

家族団欒の食卓、日曜日には公園へピクニック----そんな世間一般の幸せに憧れた時期もあったが、自分はマッチ売りの少女のように灰になりたくない、この現実をさっさと受け入れ、自分の思うように生きようと決心したのが、わずか12歳の時だった。

それはみずきの両親が離婚した年だった。

みずきは、慰謝料を食いつぶし、生活能力のない母の面倒を見ることよりも、最高の教育と環境だけは与えてくれる父の元に残ることを選んだ。

そのことにも後悔はしていなかった。

リアリストな癖に根は楽観的な性格が幸を成しているのかもしれない。


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