蒼穹の誘惑
「失礼します。社長、長谷川副社長と西条専務が来られました」

「ありがとう、こちらへ案内してください」

秘書に案内され、 白髪のまじった五十代後半の男性二人が一礼をし社長室に足を踏み入れる。

四十畳はあるこの社長室には、応接用セットに加え、重厚な会議用テーブルも常備されている。

みずきは、先代のゴルフパットの練習用スペースを彼女お気に入りのカッシーナの会議用テーブルへと変えたのだ。

「おはようございます、社長」

「おはようございます」

挨拶をしたのは専務の西条のみで、副社長はみずきに一瞥をくれただけでそれ以上会話もせずに用意された椅子に座った。

関係上、みずきは副社長の姪にあたる。だが、二人の間には親類の情というものがない。

みずきの方も媚びへつらうどころか、視線すら合わせようとしない。

ピンと張りつめた空気に、居たたまれなくなった秘書はそさくさと退散した。



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