蒼穹の誘惑
「ねぇ、おばさん?」

高宮とみずきの間に割って入ってきた達也の声に、普段のみずきに戻る。

「おばさんじゃない、みずきお姉さんよ!ちゃんと名前あるんだから!」

みずきは達也の頬を軽くつねった。

「…ってぁなぁ!じゃあ、みずきでいいや!」

「あんた、生意気!」

みずきはもう一度達也の頬をつねる。

「痛いって、みずき!」

涙目で頬を撫でながらも、みずきと呼ぶことをやめない。

「もう、みずきでいいわ。で、何?」

「みずきって、蒼冴の何?」

「-----え?」

いきなりすぎる子供の無邪気な質問に、一瞬言葉に詰まる。

自分は何を返答に困っているのだろうか?

正直に言えば良い、社長だと----

何故かわからないが、みずきは自分が社長であるということを今は忘れたかった。

今日が休日だったからかもしれない。

一人の人間、『長谷川みずき』でいたいと思ってしまった。


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