道化師と菫の花/GIADOOLⅣ

「分かってるさ・・・。」


 女マスターはそれ以上、口にしない。


 言葉にすれば安くなる。


 言葉にできるほど、彼らがたどった道は、容易くない・・・。


 しばらく、無言で酒を酌み交わす、二人。


 どれぐらいそうしていただろうか・・・。


 突然、店のドアが開いた。


「いらっしゃい・・・って・・・。」


 条件反射で挨拶をした女主人だが、客の顔を見た途端、言葉を失う。


「ふぅ・・・情報屋の言葉も馬鹿にできないものだな・・・」


 入ってきたのは、一人の恰幅のいい男性


 虎神の軍服をラフに着こなし、無精ひげを無造作に伸ばした、見るからにだらしない中年の男。


 階級を見ると、少尉となっているが、同時に傭兵を表す、青いラインを見ることができる。


「まさか・・・水練・・・・?」


 客を見た、アルクの表情が固まる。


「あんた・・・生きていたのか?」


 女主人の表情も同時に固まっていく。


「久しぶりだな、ティム・・・そして、アルフレッド。」


 水練と呼ばれた、男は女主人と・・・そして、アルクの顔を見ると、本当に懐かしそうに、昔の旧友を見るかのように、嬉しそうな顔を浮かべた。


 水練・・・


 それは・・・アルクの「父」


 そして・・・アルクの「敵」・・・・。



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