誰を信じる?(ショートショート)
「裏?(笑)」
 綾乃は伸の妙に真剣な顔つきに、違和感を感じて苦笑する。
「ひっでぇなぁ伸ちゃん。俺、若い子好きなのに……」
「風俗行け。風俗」
「ま、そんな仲なのよ(笑)」
「はぁ……(笑)」
 綾乃はとりあえず笑った。
「じゃあ俺、帰るわ。昼から業者が来るから」
「うん、別に用事ない」
「つれないねぇ(笑)、女ができた途端これだ(笑)」
「私、別に女って訳じゃ……」
「いんだよ、綾。んな奴に説明しなくても。じゃあな、ユカタさん」
 筒井は笑いながら後ろを向くとそのまま玄関から出て行ってしまった。
「あいつの店はオカマバーだから。行くなよ」
「えっ!? オカマ……? じゃぁあの人も、お店ではオカマなの?」
「まぁ……、そんなとこだ」
「ふぅ~ん……、人って分からないもんだね」
「そうか?」
「うん」
「お前……」
「何?」
「あいつ、結構好みだろ?」
「えっ!? あいつって? 今の、人?」
「そういえばさ、オタッキーの前の彼氏があんなんじゃなかったっけ……」
「えぇ? 違うよ。全然違う。普通のサラリーマンだったもん」
「職種じゃなくてさぁ……、まぁ、いいけど。店には行くなよ」
「オカマだから?(笑)」
「そーだ。女1人で行くには、危ない」
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