誰を信じる?(ショートショート)
菜箸でフライパンの中の卵をかき混ぜていた手が止まる。
「ちょっと、聞きにくいんだけど」
「何? 何だよ……。気にすんな。言ってみろよ」
伸の表情が突然真剣になり、IHの電源は消された。
「あのさ……」
その時、廊下の奥で物音がしたような気がして、そちらを振り向いた。
「えっ……」
「あぁ、そうだった」
綾乃が見ている方へ、伸は淡々と話しかける。
「もう帰るンすかぁ?」
廊下の奥から出てきたのは、男。見てすぐに分かる。ただのサラリーマンではない。
「あぁ、悪い。もう帰るよ(笑)」
男は笑いながら綾乃の方を見たが。ワイシャツの前が大きくはだけていて、目のやり場に困った。
「いいンすよ。彼女じゃないんで」
「あっ、初めまして。伸さんの……お友達です」
「こっちが桜木さん。で、こっちが、筒井さん」
伸は、手早く初対面の2人を紹介する。
「初めまして。筒井です。また良かったら、遊びに来てね」
筒井と名乗る男はズボンのポケットから素早く名刺を取り出すと綾乃に渡した。夜の業界人は、名刺を出すタイミングとスピードにはうんと長けているが、だからといって望めるものもない、というのが綾乃の持論である。
さて、名刺には『スナック 豊 筒井 豊』と電話番号だけ書かれてあった。
「ホストの人じゃないんですか?」
綾乃は思ったままを聞いた。筒井を見た瞬間、伸の店のオーナーか、店長……、そういう雰囲気だと捉えたからである。
「同じようで、違うかな。俺の店にはドンペリなんて置いてないからね(笑)」
「ただのトモダチ」
トレイにスクランブルエッグと牛乳とバターロールを乗せた伸は、2人の間をすり抜けてリビングへさっさと向かう。
「……伸ちゃんに、こんな大人の友達がいたなんて……」
「いたらなんだよ」
伸はムッとしながら、パンをかじって綾乃を睨む。
「俺も知らなかったなぁ。伸にこんな友達がいたなんて(笑)」
「綾、そいつはやめとけよ。そいつにはまると、裏ネオン街道まっしぐらだぞ」
「ちょっと、聞きにくいんだけど」
「何? 何だよ……。気にすんな。言ってみろよ」
伸の表情が突然真剣になり、IHの電源は消された。
「あのさ……」
その時、廊下の奥で物音がしたような気がして、そちらを振り向いた。
「えっ……」
「あぁ、そうだった」
綾乃が見ている方へ、伸は淡々と話しかける。
「もう帰るンすかぁ?」
廊下の奥から出てきたのは、男。見てすぐに分かる。ただのサラリーマンではない。
「あぁ、悪い。もう帰るよ(笑)」
男は笑いながら綾乃の方を見たが。ワイシャツの前が大きくはだけていて、目のやり場に困った。
「いいンすよ。彼女じゃないんで」
「あっ、初めまして。伸さんの……お友達です」
「こっちが桜木さん。で、こっちが、筒井さん」
伸は、手早く初対面の2人を紹介する。
「初めまして。筒井です。また良かったら、遊びに来てね」
筒井と名乗る男はズボンのポケットから素早く名刺を取り出すと綾乃に渡した。夜の業界人は、名刺を出すタイミングとスピードにはうんと長けているが、だからといって望めるものもない、というのが綾乃の持論である。
さて、名刺には『スナック 豊 筒井 豊』と電話番号だけ書かれてあった。
「ホストの人じゃないんですか?」
綾乃は思ったままを聞いた。筒井を見た瞬間、伸の店のオーナーか、店長……、そういう雰囲気だと捉えたからである。
「同じようで、違うかな。俺の店にはドンペリなんて置いてないからね(笑)」
「ただのトモダチ」
トレイにスクランブルエッグと牛乳とバターロールを乗せた伸は、2人の間をすり抜けてリビングへさっさと向かう。
「……伸ちゃんに、こんな大人の友達がいたなんて……」
「いたらなんだよ」
伸はムッとしながら、パンをかじって綾乃を睨む。
「俺も知らなかったなぁ。伸にこんな友達がいたなんて(笑)」
「綾、そいつはやめとけよ。そいつにはまると、裏ネオン街道まっしぐらだぞ」