誰を信じる?(ショートショート)
オカマのオバサンとオバサンの間に挟まれ、ソファに座っていた筒井豊は、ドアの影から覗く綾乃の小さな顔に一瞬驚いたが、すぐに表情を切り変えるとカウンター席を勧めた。
店は小さいが、カラオケをしているオバサン連中が必要以上にソファを占領し、ある意味満席状態である。
「一人?」
筒井はオバサンの間からすり抜けて、カウンターの中へ入った。
「ユタカちゃぁん! 若い子に浮気しちゃダメよぉ!」
というマイク越しのいやに高い声が店中に大きく響く。
「あっ、あの……」
「何? 座って? ビールでいい?」
「あっ、はぁ……」
綾乃は勧められるがままに、席に座ると筒井の手元に視点を置いた。
「伸は? 今日はもう仕事?」
「えっ? はぁ……多分」
「まさか来てくれるとは思わなかったなぁ(笑)」
筒井はグラスに注いだビールをテーブルに乗せながら、綾乃の胸中を伺った。
「お……オカマバーだから?」
「? おかま? 何……? どのカマのこと?(笑)」
「あの……ここ、オカマバーじゃないんですか?」
「えっ?? いや……(笑)」
何がおかしいのか、筒井は一人で腹を抱えている。
「ちょっとユタカちゃぁん! こっちも来てよねぇ!」
「あぁ、すみません。ちょっと、知り合いなもので……(笑)」
「えっ……何でそんな、笑うんですか? だって伸ちゃんが……」
「あいつくらいだわな、そう言うの。納得」
筒井は一人頷くと、瓶ビールを一本、オバサンのテーブルに運ぶ。そして、マイクのオバサンの耳元で何か囁き、オバサンが「ブッ!」っと噴出したかと思うと周囲は爆笑の渦に包まれた。
「いやぁ、ごめんごめん。で? あぁそっか……。伸がね」
「はい……」
「あれ? 全然飲んでないけど?」
「あっ、そんなことは……」
綾乃はとりあえず、グラスに手をあてる。
「で、それでもここへ来たんだ。何? オカマに興味があったとか?(笑)」
筒井は一人で言って、一人で笑っている。
「興味というか。なんか、今まで夜出かけられるお店ってなかったもので……。伸ちゃんのお店は行きにくいし」
「……。行ったこと、ないの?」
「はい。伸ちゃんの友達ですっていうと、だいたい皆お客さんだと思うみたいなんですけど」
「いやぁ……、あっそう! それはまた……。へぇ……。ってことは、何?」
「えっ?」
「いやぁ、そうなんだ(笑)」
「はぁ……」
「いやいや、年を取ってくるとそういうことにうとくなってくるんだよ(笑)」
「……へぇ……」
「じゃあなおさら、伸と来ればよかったのに」
「いやでも……」
「今日あいつ、店上がるの何時?」
「さぁ……」
「仕事帰りに会うんじゃないの?」
「いえ、だいたいいつも朝かな……」
店は小さいが、カラオケをしているオバサン連中が必要以上にソファを占領し、ある意味満席状態である。
「一人?」
筒井はオバサンの間からすり抜けて、カウンターの中へ入った。
「ユタカちゃぁん! 若い子に浮気しちゃダメよぉ!」
というマイク越しのいやに高い声が店中に大きく響く。
「あっ、あの……」
「何? 座って? ビールでいい?」
「あっ、はぁ……」
綾乃は勧められるがままに、席に座ると筒井の手元に視点を置いた。
「伸は? 今日はもう仕事?」
「えっ? はぁ……多分」
「まさか来てくれるとは思わなかったなぁ(笑)」
筒井はグラスに注いだビールをテーブルに乗せながら、綾乃の胸中を伺った。
「お……オカマバーだから?」
「? おかま? 何……? どのカマのこと?(笑)」
「あの……ここ、オカマバーじゃないんですか?」
「えっ?? いや……(笑)」
何がおかしいのか、筒井は一人で腹を抱えている。
「ちょっとユタカちゃぁん! こっちも来てよねぇ!」
「あぁ、すみません。ちょっと、知り合いなもので……(笑)」
「えっ……何でそんな、笑うんですか? だって伸ちゃんが……」
「あいつくらいだわな、そう言うの。納得」
筒井は一人頷くと、瓶ビールを一本、オバサンのテーブルに運ぶ。そして、マイクのオバサンの耳元で何か囁き、オバサンが「ブッ!」っと噴出したかと思うと周囲は爆笑の渦に包まれた。
「いやぁ、ごめんごめん。で? あぁそっか……。伸がね」
「はい……」
「あれ? 全然飲んでないけど?」
「あっ、そんなことは……」
綾乃はとりあえず、グラスに手をあてる。
「で、それでもここへ来たんだ。何? オカマに興味があったとか?(笑)」
筒井は一人で言って、一人で笑っている。
「興味というか。なんか、今まで夜出かけられるお店ってなかったもので……。伸ちゃんのお店は行きにくいし」
「……。行ったこと、ないの?」
「はい。伸ちゃんの友達ですっていうと、だいたい皆お客さんだと思うみたいなんですけど」
「いやぁ……、あっそう! それはまた……。へぇ……。ってことは、何?」
「えっ?」
「いやぁ、そうなんだ(笑)」
「はぁ……」
「いやいや、年を取ってくるとそういうことにうとくなってくるんだよ(笑)」
「……へぇ……」
「じゃあなおさら、伸と来ればよかったのに」
「いやでも……」
「今日あいつ、店上がるの何時?」
「さぁ……」
「仕事帰りに会うんじゃないの?」
「いえ、だいたいいつも朝かな……」