蜜色チェーン―キミと一緒に―


「俺には無理。俺みたいな人間には、神様も運命を選択できる権利なんかくれないだろ」
「そんな事ない……っ」
「由香は俺を誤解してるけど、俺は、簡単に裏切る人間だよ。
あの女から生まれたんだから」
「誤解なんかしてないっ! 拓海くんは優しい人だもん」
「それが誤解。俺は、優しくもないし、由香みたいにいい子にもしてこなかったし。
だから、無理だよ」
「そんな事ないよ……」


ぎゅって、力いっぱい握った手。
小さな声で言った私に、拓海くんは微笑むだけで何も言わなかった。


私は……拓海くんほど優しくて繊細な人を知らない。

拓海くんが、ちゃかすみたいに言った“神様”が、もし本当にいるなら。
拓海くんこそ、救われなくちゃいけない。

私の分の幸せも、全部使っていいから……っ。
拓海くんを救ってください―――。


「ごめんな……。由香」


ごめんの意味が分からなくて聞いた私に、拓海くんは微笑むだけで……。
ツラそうに微笑む拓海くんが、なぜか離れて行っちゃう気がした。



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