蜜色チェーン―キミと一緒に―
◇不審者の足音



「ねぇ、あれなんだと思う?」


終業時間間近になった時、顔をしかめた愛美が言った。
愛美が不信感たっぷりの視線を送るのは、ロビーのガラスの向こうにいるひとりの男の人。

一階部分は、入口がある壁はほとんどがガラスの造りになっているから、通行人が見える。
視界をクリアにする事で防犯効果があるかららしいんだけど……。

こっちからも外が見えるって事は、向こうからも中が見えるって事で。


ガラスの向こう側にいる人は、こちらを気にしながら明らかにおかしな態度で、会社の前をうろうろしていた。

目深にかぶったキャップと、白いパーカーとダメージ加工のジーンズ。
格好から予想すると若い男の人だけど……。



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