蜜色チェーン―キミと一緒に―


「……入りづらくて見てるのかな」
「いやいや、変質者なんじゃないの? どうする?」
「でも、うろうろしてるだけだし……。
あ、警備員さんきた。愛美呼んだの?」
「ううん。呼んでないけど……あっ、自動ドア閉めにきたんだ!」
「あ、そっか……。17時だもんね」
「安心してる場合じゃないよ。
閉める時間を狙って強盗に入る気かも。とりあえずボール持っとこ。
由香、通報ボタン準備しといて」
「あ、うん」


17時になって、シャッターが下り始める。
私と愛美が担当している受付には、窓口とは違って出納だとかお金が保管されている倉庫はない。
けど、金融機関の一部である事は間違いないから、いざっていう時の対応は色々と教えられてる。

愛美の言うように、こういう時間帯を狙ってくる強盗もいるっていうのは聞いていたから、ふたりで警戒体勢に入る。
緊張して、心臓が騒がしく動いていた。

ガタガタ鳴りながらシャッターが降りる。
ガラス部分全部にシャッターが降りて外の景色が見えなくなって……。

全部見えなくなっても、結局何かが起こるわけではなくて。



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