蜜色チェーン―キミと一緒に―
『拓……』
『し。斉木さんが来たみたいだ』
『あ……』
『これ、お土産の中から一個抜いといたんだ』
ポンって頭を撫でた拓海くんが差し出したのは、薄い手のひらサイズの箱。
さっきの話からすると、中身は多分チョコレートだ。
『他の子には内緒だから』
チョコレートを受け取った時、バタバタと足音を鳴らして走ってきた愛美が角を曲がって姿を現した。
息を切らせているところを見ると、エレベーターを出た場所からずっと走ってきたのかもしれない。
『由、香……っ、専務は?!』
『大丈夫だよ。俺が話をつけておいたから』
『え……本当ですか?』
『ああ』
『さすが沖田さん! 由香が部屋入ってっちゃったからどうなるかと思ったー……。
最悪、専務がクビとか言い出すんじゃないかって心配しちゃったし』
はーって息を吐き出した愛美が事実を言い当てるから、拓海くんと顔を合わせてこっそり苦笑いした。