蜜色チェーン―キミと一緒に―
お母さんが再婚相手を連れてきたのは、拓海くんが10歳の頃。
拓海くんは、お母さんの幸せを思って純粋に賛成したけど。
それからの生活は、拓海くんにとっては幸せなモノではなかった。
新しくできたお父さんと拓海くんは折が合わなくて、何かとケンカを繰り返したけど……。
お母さんは一度として、拓海くんの味方はしてくれなかったらしい。
それどころか、ケンカをするたびに、お母さんは拓海くんを迷惑そうな顔で見ていたらしくて。
その顔が、“私の幸せを壊すな”って言ってるみたいに思えて、今でも忘れられないって、拓海くんがいつか笑って言ってた。
それを聞いたのは、私が13歳の頃で、拓海くんが19歳の時。
家庭教師に来てくれてるうちに親しくなって、そんな話をしたりした。
なんで、当時まだ13歳だった私になんか話してくれたのかは分からないけど。
もしかしたら、子どもの私に話さなければ壊れそうなほど、拓海くんが追い詰められていた証拠なのかもしれない。