蜜色チェーン―キミと一緒に―
仕方ない事なのは分かっていたけど、その時の拓海くんの気持ちを思うと、いてもたってもいられないくらいに、感情が溢れ出す。
……あれ?
でも、昨日私の部屋を訪ねてきた時、拓海くんは疲れ切った声をしてはいたけど、傷ついた顔はしていなかった気がする。
なんでだろう。
「――野原さん」
受付の椅子に座ったまま視線を落としていると、急に名前を呼ばれた。
まだ営業時間外だから、社内の誰かしらだろうって思って顔を上げたのに。
目に飛び込んできたのは、予想外の人物だった。
社内の誰かだって事には、変わりないのかもしれないけど……。
「しゃ……社長っ……あ、おはようございます」
慌てて立ち上がって頭を下げると、後ろで椅子が倒れた音がした。
それを聞いたからか、社長の笑い声が頭の上から聞こえてくる。