蜜色チェーン―キミと一緒に―
「仕事だけじゃなく、野原さんとの事も覚悟を決めたって事だろう。
考えてみれば、拓海が私に頭を下げてまで頼んだのは、野原さんの事だけだったな。
入社させてやって欲しいって」
「え……っ」
「いや、私が力を貸すまでもなく、野原さんは実力で採用試験に受かっていたんだ。それは誤解しないで欲しい。
拓海に頼まれたのは、万が一不採用になった時、どうにかしてやって欲しいという事だった」
「もう終わった事だろ。わざわざ今更そんな話を持ち出すな」
「今まで、拓海を入社させる事や部屋を用意する事、拓海の頼みを断った事はなかった。
それがどんな横柄な態度でも、私にはそうしてやる事くらいしかできなかったからな。
それなのに、私がどんな頼みでも断らないと分かっていた上で、野原さんの事だけは頭を下げてまでして……」
「由香、もう話が終わったなら戻ろう」
止めても無駄だと思ったのか、拓海くんが私の肩を抱いて、もう片方の手でドアを開ける。
そして私を部屋の外に出した後、一度社長を振り返った。