蜜色チェーン―キミと一緒に―


「田中係長、もう酔ってるんですか?」


私の隣から覗き込むみたいにして愛美が聞くと、田中係長が持ったままのジョッキを持ち上げて「三枚目」って笑う。


「三杯目と三枚目をかけたおやじギャグですね。なるほど」
「いや、そこ解説されるとさすがに恥ずかしいからやめて」
「やめません。
酒癖悪いおじさんは、羞恥プレイするって決めてるので。
あれ、でも恥ずかしがるって事は、まだそんなに酔ってないんですね」
「なんで? 普通、そんな解説入れられたら誰でも恥ずかしいんじゃないの?」
「だって、二ヶ月前の歓迎会で、田中係長、今とまったく同じ事言ってたから、私もまったく同じ返しをしたら、“解説ありがとう~”って上機嫌でしたもん」
「え、俺、二ヶ月前まったく同じ事言ったの?
三枚目って?」
「はい。しかもその時はもっと飲んでたけど、どうしても言いたかったみたいで、嘘ついて“三枚目”って。
全然面白くないのに、自信満々のドヤ顔でした」



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