蜜色チェーン―キミと一緒に―
ズケズケ言う愛美に、田中係長が片手で顔を覆ってうなだれる。
「ちょっとそれ勘弁して……うわー、俺恥ずかしい……」
「大丈夫ですよ。お酒入ると田中係長いつもそんなもんですもん。
いつもの事ですし、誰も気にしてませんよ」
「うわー……」
追い打ちをかけるように言った愛美を止めようとした時、後ろの席から聞こえてきた名前に身体が強張った。
「そういや、沖田さんって、社長の息子だとかいう噂あったらしいじゃないですか。
結局、嘘だったんっすよね?」
大きな和室を貸切にして行われている決起集会。
20畳以上の広さがある和室には、長い机が二列に置かれている。
営業部と一緒っていうことは、もちろん拓海くんもいるって事で。
こういう飲み会の席では、なんとなく気まずくて、入社時からずっと、一緒のグループにならないように、わざと拓海くんを避けて席を選んでる。
でも、私の耳は拓海くんの名前や声を特に意識して拾い上げちゃうから、離れて座ったところであまり意味はないのかもしれないけど。