蜜色チェーン―キミと一緒に―


拓海くんにそう言われて、田中係長が部屋に戻る。
その足取りはまさに千鳥足で、支えてあげないとまずいかもって心配になったけど……。

私を振り返った拓海くんが、いつもは見せないような怖い顔をしていたから、びっくりして動けなくなる。


「ダメだろ。酔っ払いとふたりきりになんかなっちゃ。
由香は小さいし力もないんだから、今みたいに迫られたらろくな抵抗もできないし、危ないだろ」
「……ごめんなさい」


私はトイレに来ただけで、なろうと思ってふたりきりになったわけじゃない。
けど、拓海くんが心配して言ってくれてるのが分かったから、素直に謝った。

そんな私に顔をしかめた拓海くんが、小さなため息をついてから「ごめん」って呟く。



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