蜜色チェーン―キミと一緒に―


「由香が悪いわけじゃないのは分かってるんだけど……。
他の男に迫られてるところ見たら、カっとなっちゃって。
別に、怒るつもりはなかったんだけど……ごめん」
「ううん。心配してくれてるの分かるから。
謝らないで」


首を振って微笑むと、拓海くんも困り顔で微笑む。
それから、少し周りを見渡して……私に近づいた。

きゅって抱き締められて、瞬間的に言葉を失った。
だって、部屋以外でこんな事されるの初めてだったから。

確かにここは、壁が目隠しになってるから、廊下からは見えない。
でも、少し先には営業部の人が集まっている部屋だってあるし、誰かがトイレに来たら見られちゃうのに……。

そんな風に思って戸惑っていると、私を抱き締めたまま拓海くんが言う。



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