蜜色チェーン―キミと一緒に―


ははって笑った彼が、受付のカウンターに肘をつく。
ふわって空気の中に紛れた彼の香りに気づいて、胸がキュって縮こまった。


「ですね。私語はつつしまないと。気をつけまーす」


全然反省しているようには見えない愛美が笑いながら返事をすると、彼は困り顔で「頼むよ」って笑う。

それから私に視線を移して……、優しく微笑んだ。


沖田拓海、28歳。

会社を担う第一営業課に配属されていて、外見と人当たりの良さから、女子社員の人気を集めている。
そこら中で争奪戦が繰り広げているのは、他の課に知り合いの少ない私ですら知ってる。

そんなに人気のある彼だからこそかもしれないけど、女関係の噂が途切れない。

どこの課の誰と関係を持ってるらしいとか、女癖が悪いとか、特定の彼女は作らない、とか。
女子社員の間では好き勝手噂されていた。



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