蜜色チェーン―キミと一緒に―


「で? いつなの? 由香の初体験」


まだ諦めてなかったのか、拓海くんがエレベーターに乗った途端、愛美がぐるっと私の方を向いて聞く。


「私語をつつしみますって、今言ってなかったっけ?」
「大丈夫大丈夫。今度は自動ドア見張っとくから。
それに、今日はお客様来ないって。大企業はほとんどお休みみたいだし。
うちの営業だって、ほとんど外出てないじゃん」


「で、いつ?」ってしつこく聞く愛美にため息をついてから、答える。

広いロビーは本当に誰もいなくてシーンと静まり返っていたから、内緒話するみたいな小さな声で。


「中三の時」
「ちゅ……っ! えっ、想像してたよりだいぶ早いんだけど!
っていうか、それ、平均よりも早くない?!」
「うん。かもね」
「誰と? 当時の彼氏?」



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