オジサンと、




「………はぁ」

「まーた溜息?幸せ逃げちゃうよ」


友達のそんな声が聞こえるけど、答える気力も湧かない。

荒木さんが私を娘のようにしか見ていない事を今更のように思い出して、勝手に沈んでいるだけなんだけど。


「お父さんとお母さんの…馬鹿」


どちらかがいてくれればそもそもこんな状況にはならなかったのに。
言っても意味のない恨み言。逆恨みもいいとこだ。余計落ち込む。


「本当にどうしたの?何かあった?」

「ううん…何でもないよ。友よ、慰めておくれ」

「あーはいはい」


ぐしゃぐしゃと頭をかき回されて少しだけ落ち着いた。


「そう言えば、明日優誕生日じゃん?」


かき回す手が不意に止まって、聞こえた言葉にああと頷く。

すっかり忘れてた。
18歳、か。
荒木さんは覚えてるかな。


「暇ならうちにおいでよ、ささやかながらお祝いしてあげるからさ」

「ホント?行く行く!沙樹、ありがと」


現金な私は実らぬ恋を思うより、持つべきは友達だと確信した。


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