オジサンと、
授業終わって、放課後。
家事を任されている私は勿論帰宅部。学校に残らなきゃいけない予定も用事もなく、友達と少しだけ語らってから一人帰路に就いた。
荒木さんには何度か家事なんて気にせず部活をやれば良いと言われたが、少しでも負担が軽くなるようにって断った。
「やば、雨降りそう」
どんより曇った空に少し憂鬱な気分、でものんびりしていられない。雨が降ったら洗濯物が濡れてしまう。
早く帰らなきゃって走り出したと同時に携帯が鳴った。
誰よこんな時にって舌打ちしてしまったのは、内緒。
私は相手を確認せず、そのまま携帯を耳に当てた。
「もしもし…優、まだ学校か?」
声を聞いた瞬間にどくん、と心臓が跳ねて自然と足が止まった。
聞き慣れた声なのに、何時もより少し低めな声で囁かれると頭が痺れてまともに思考できない。そんな感覚を度々覚える。
「荒木、さん」
不自然な間。
けれど電話の相手は気にした様子もなくて。
「まだ帰ってないなら…車に乗せる。学校で待ってなさい、良いね?」
淀みなくそう言うから、まだ仕事あがりにしては早いんじゃって思う間もなく頷いていた。