オジサンと、
「…優、おつかれ」
「荒木さんもお仕事お疲れ様です、って言うか上がり早くないですか?」
助手席に乗り込みながら尋ねると、荒木さんは顔を僅かに顰めて沈黙した。
何かまずい事でもあったのだろうか。
不安混じりに見つめれば、視線に気付いた彼はハンドルを握り直して苦笑する。
「急な出張が入って…悪いが、留守を任せたいんだ。帰りは多分明後日の朝方になると思う」
「あ、はい…っと、今から出張先に?」
「あぁ」
出張はさして珍しい事じゃ、ない。ない、だけど…何でこんな時に。
軽いショックに私の頭は真っ白。
話を続けている荒木さんの声を遠くに感じながら、少しだけ唇を噛んだ。