恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-

でも、あたしのほうが彼のことを意識し過ぎているせいか、会話ができるようになったといっても、二、三回、言葉のやり取りをすると、それ以上はどうしても会話が続かなくって、自分自身の勇気のなさにあたしは涙の出そうな思いだった。


それでも彼のことをもっと知りたいという思いを押さえ切れなくなったあたしは、考え抜いたあげく思いついた“彼を知るための手段”を実行に移すことを決意した。



翌日――水曜日の夕暮れ時、あたしは眞鍋さんと二人で工場近くの喫茶店にいた。

その日、仕事が終わってからも残って後片付けをしていた眞鍋さんに…

「ちょっと相談に乗ってほしいことがあるんだけど…」

…って声をかけたんだ。


自分の胸の奥に秘めた大切な想いを他人に打ち明けるという行為はすごく勇気がいることだと思う。

でも、それでも渋谷祐二本人に打ち明けることに比べれば、眞鍋さんに打ち明けることなんて、何百分の一くらいの勇気しか必要じゃなかった。


「ごめんね。仕事で疲れてるのに、こんなところに来てもらったりして……」
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