久遠の花〜 the story of blood~【恋】
「――ミツケ、タ」
どこからか、二人とは別の声がする。
途端、それまで見えていた光景は消え、辺りはいつも見ているのと変わらない町並みが目に入った。
「――ミツケ、タ」
まただ。
今度は、はっきりと聞き取れた声。周りを見るも、それらしいものは見つけられず、誰もその場にはいなかった。
も、もしかして……。
また、あの日と同じことが起きるんじゃないかと、不安が過る。
声がしたと思ったら、今いる場所とは違う場所が見えて――。
似ている状況に、逃げようと考えつくまで、時間はかからなかった。少しでも離れよう。ここから逃げようと、徐々に足を速めていった。
「――ミツケタ!」
耳元で声がしたと同時。体に痛みが走り、なにが起きたのかと困惑していれば、
「がっ?!…、っ……、、、!」
気付いた時には、首を鷲掴みされていた。
「オレダケノ血! オレダケノモノ!!」
そう叫ぶのは、血走った目をした男性。
見知らぬその人に、私の体は勢いよく、壁に押し付けられてしまった。
そこまでされて、ようやく、逃げなきゃという考えが回り始めたものの――到底、男性に敵うはずもなく。
「大人シク、シロ!」
「っ!?……、、、…っ」
暴れる私を、男性は更に強い力で首を締めあげていった。
いきっ、が……!
目に映るのは、怪しく笑う男性の姿だけ。
次第に視界もぼやけていき、あの時のような、黒く深い闇に埋もれてしまいそうになる。