暁に消え逝く星

 重く感じる手足を動かして泳ぎ、脇の通路へたどり着く。
 水から上がると、内部の空気のほうが水より暖かかった。
 長靴を脱ぎ、逆さまに壁に置く。
 濡れて張り付いた上衣を脱いでも、その感じは変わらなかった。
 水をきつく絞り、それで手早く身体を拭く。
 やがて凍えて震えていた指先にも熱と力が戻る。
 下衣も脱ぎ、同じように水を絞り、着替える。
 濡れた髪は完全には乾かせないが、何度も拭いたため、水滴は落ちない。
 持ってきた布で髪を隠すように頭に巻くと、それで十分だった。
 濡れた服は革袋に入れ、息継ぎ用の革袋とともに奥に隠した。
 めったに訪れるもののない場所だ。
 さらにここから水路を通って、皇族に連なる貴族の居住区に行かねばならないため、身軽にしておく必要があった。
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