暁に消え逝く星
「すまない。私にはあなたに見覚えはない。だが、その服には、覚えがある。あなたは皇宮に勤めていた人なのか?」
「――」
女はわずかに眉根を寄せた。
死を前に取り乱している腰抜けの無様な皇子を予想していたのに、あくまでも目の前の皇子は落ち着きを崩さない。
そして、イルグレンも、女のかすかな苛立ちを見て取った。
彼女の目的が何かはわかるが、その意図が読めなかった。
「そう。皇子様の言う通り、これは皇族に仕える侍女に許された装束よ。皇族に連なるとある姫君に仕えていた時の。そして、今はその皇国もお姫様もいない。
あんたの身内は皆死んだわ、首を斬られて。無様に泣き叫んで、命乞いをしながら。
警備の一番手薄になる時間を、そして、王宮の見取り図を革命派に流したから、皇宮を制圧するのなんて、あっけないほど簡単だった。もうその頃には、内部の警備はお飾りでしかなかったもの」
イルグレンは信じられぬように女を見据えた。
この目の前の華奢で頼りなげな女によって、国は滅びたというのか。
女の美しくも無表情な顔と裏腹に、瞳には怒りと憎しみが溢れていた。
「私を――皇族を、そこまで憎む理由を聞かせてくれ。一体、私達は何をしたのだ」
その問いに、
「あたしの家族を殺したのよ!!」
激昂したように、女は叫んだ。