暁に消え逝く星
「あんたたちが自分達だけを護ってた贅沢な宮の、その壁の向こうで、あたしの家族は、食べるものも食べられず、餓えて、たった独りで死んでいった!! あたしのたった一人の肉親、あたしが守るはずだった、まだ十にしかならない弟は――!!」
叫んでいるのに血の気のない青ざめた顔は、今にも倒れてしまいそうに儚げだった。
「あたしは、弟の葬儀をしたかった。あたしが、死に目にさえ会えなかったあたしが、弟にできる唯一のことだったから。せめて、弟を洗い清めて、きれいな装束を着せて、その魂を安らかに死の国へ旅立たせてやりたかった。
でも、堅く閉ざされた門が弟のために開かれることはなかった。ほんの少しでいい、あたしが通るために通用門をほんの一時だけ、開けてほしいと言っただけなのに、それさえも、許されなかった。
その日、あんたを逃がすためだけに、いとも容易く大門は開けられたのに。
皇子様のためなら、あんなに堅く、頑丈な、大きな門がいとも容易く開かれたのに、弟のための、あんなに小さく、女のあたし一人でさえ容易く開ける通用門は、ついに開かれなかった――」
拳を震わせ、女はじっとイルグレンを睨みつけた。
「何が麗しの皇国よ? はっ、そんなもん、みんな嘘っぱちだわ。弱いものを殺し、その死体を貪り食んで肥え太る国、嘘で固めたまがい物。
神々の末裔? 尊い血統? どこが? 醜い、薄汚れた血よ。濁って腐った呪われた血よ。だから、みんな燃えて無くなった。皇子様、あんた以外は」
女は細い指で、イルグレンを指差した。
「なぜあんたは生きているの?」
一切の慈悲もなく、その言葉は紡がれた。
「あたしの弟は、可哀相なあたしの弟は、たった十年しか生きられなかったのに。
あんた達が贅沢なお城でたくさんの食事を無駄に貪り食い散らかす間に、弟は餓えて餓えて、骨と皮ばかりになって死んでしまったのに。
全てが失われても、あんただけは生き残るの?
生きることを許されるだけの価値が、あんたにはあるの?」
「――」
その問いに、イルグレンは答える術がなかった。
全てが失われたのに、自分だけが今も生きているのは何故か。
その問いを、彼自身が今も探しているからだ。