暁に消え逝く星

 返す言葉もない大臣達に、エギルディウスは、
「このことは未だ御内密に。然るべき時までは旅の道中のような危険は避けたいので」
 礼をして、去っていった。
 姿が見えなくなったところで、大臣達が大きく息をつく。
「困ったことよ。国庫は確かに潤ったが、今更あの皇子を迎え入れたところで、我々の利となるものは何もないではないか」
「かの地はすでに皇制廃止と暫定政府自立に向けて立ったと聞く。隣国オルディリアはそれを指示する意向を表明した。あそこは皇国との貿易によって富を得ている故に今回の内乱が収まることを最優先するだろう」
「では、戦になることはないのだな」
「皇位継承権を持つ者が全て処刑されたのなら、すでに国民に皇族の復権を望む者もおるまい。皇子を受け入れたことが、我々の害となることはないのでは?」
「我々が皇子の復権を求めて兵を出すということにならぬのなら、受け入れるのも仕方あるまい」
「ならばそれを確約してもらわねば! 口約束など信じられん」
 大臣達はなおも言い募りながら、エギルディウスと同じように去っていった。



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