暁に消え逝く星
太陽が色を変え、ごつごつした岩場のはるか彼方へ沈もうとしていた。
男が馬を止めたのは、その太陽より少し南の岩場の影に張られた天幕が近くに見えてからだった。
昼食と休憩をとったあと、先に行かせた男達が野営のために準備しておいたのだろう。
今日の移動はここまでだ。
女は内心で安堵した。
体中がこわばっていた。
先に下りた男が女の身体を持ちあげ、馬から下ろす。
「奴らについていけ」
先に下りて天幕近くの焚き火に向かっていく男衆を追って、女はゆっくりと歩いた。
自分がまだ、揺れているように感じた。
乗り慣れない馬に揺られていた身体は、極度の疲労であしもとさえおぼつかない。
自分の身体が支えをなくしたように一足ごとに揺れている。
不様に倒れないためには、立ち止まるしかなかった。
先を行く男衆がどんどん遠くなる。
「リュシア?」
背後からかかる声に、女は初めて男が自分の後ろにいたことに気づいた。
歩きださなければならない。
すでに立ち止まっていても揺れる世界に必死で耐えながら、足を前に出す。
「――」
そこで、視界は途絶えた。