ゾンビのヒットマン
とにかく、どうやら丸一日寝ていたらしい私は、昨日ターゲットを狙ったのと同じ時間に、ターゲットと一緒にいる。


操られて来た先は、≪ビンゾ製薬株式会社≫の社長室であった。

社長室はこうあるべき。

それを具現化したような部屋だ。

入口から入ると、正面に向かい合わせになったソファとローテーブルがある。

ソファは革張りの黒いソファだ。
所々がすれて破けている。

ローテーブルはモダンな雰囲気を漂わせる、茶色いモノだ。
真ん中にガラスがはめ込まれており、なかなかオシャレだ。
悔しいが。

そのソファとローテーブルを通り越した場所に、私と“グレーマスク”は並んで立っている。

正面にはブラインドが引かれた大きな窓があり、その窓に背を向けるようにして社長用のデスクがある。

社長は黒いメッシュの背もたれが無駄に長い椅子に、我々に背を向けるように座っている。

つまり、窓の方を向いている、というコトになる。

なんだろうか、この姿をギリギリまで隠すというもったいぶりは。
< 33 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop